温かいタッチと深遠な物語で多くの人を魅了する漫画家、こうの史代。彼女の漫画家生活30周年を記念する初の本格的な展覧会が、2026年1月4日より熊本市現代美術館で開催される。デビュー前の貴重な作品から最新作まで、その愛しき創作の源流と全貌を体験できる機会となるだろう。
漫画家こうの史代、30年の軌跡をたどる大展覧会が熊本で開催
漫画家こうの史代の作品に触れたことがあるだろうか。『夕凪の街 桜の国』やアニメ映画の大ヒットも記憶に新しい『この世界の片隅に』など、心に深く刻まれる物語を生み出してきたこうの史代は、今年で漫画家生活30周年を迎える。その記念すべき節目を祝し、彼女の創作活動の全貌に迫る大展覧会が、熊本市現代美術館に上陸する。
「こんな作品も描いていたのか」
「あの名作の原画は、こんなに繊細だったのか」
そんな驚きと感動が待っている。単なる作品紹介に留まらない、こうの史代の「すべて」を体験できる特別な機会となるだろう。
愛らしいタッチに宿る、こうの史代作品の深遠な世界観
こうの史代の作品は、一見するとほんわかとした愛らしいタッチで描かれている。しかし、その絵柄の奥には、時に人生の喜びや悲しみ、あるいは戦争という重いテーマを、読者の心に静かに、そして力強く訴えかける不思議な魅力がある。
この展覧会は、まさにその魔法の源流をたどる旅になるはずだ。デビュー前の貴重なイラストから、愛すべき日常を描いた4コマ漫画、そして世界が注目した長編まで、500枚以上もの漫画原画が展示される。

こうの史代作品の持つ一貫した世界観は注目ポイントだ。監修者である小説家の福永信も語るように、4コマ漫画から戦争ものまで、どの作品も「愛らしいタッチ」という共通の根っこでつながっている。シリアスなテーマだからといって、突然絵柄が変わることはない。この連続性こそが、こうの作品の奥深さであり、読者が心ゆくまで物語に没入できる理由の一つだろう。

海で遊ぶ子供たちの笑顔、サメとのちょっとした遭遇まで、日常のささやかな出来事も、こうの史代の手にかかれば愛おしい物語となる。

ブランコを漕ぐ女の子の躍動感。日常のひとコマも、彼女のフィルターを通すと、まるで絵画のように物語を語り始めるようだ。
作者の息づかいを感じる、手描き原画の魅力
こうの史代の作品の大きな特徴として、アシスタントを起用せず、すべての原稿を一人で描き上げる点が挙げられる。デジタル作画が主流になりつつある現代において、一枚一枚手描きされた原画を直接目にできるのは、貴重な体験となるだろう。
彼女の原画は、まさに「一枚の絵」として独立した魅力を放っている。スクリーントーン(漫画で陰影などを表現する特殊なシート)をほとんど使わず、自身の筆致で生み出された線からは、こうの本人の息づかいや、作品への情熱がダイレクトに伝わってくるようだ。

ペン先から生み出される線の一本一本に、どのような想いが込められているのか。
色鉛筆や水彩で彩色されたイラストは、デジタルでは表現しきれない温かみと深みを感じさせる。原画ならではの繊細な線の表情や、紙の上で鮮やかに躍動する色彩の力を、会場で感じてみるのも良いだろう。

淡い色彩が織りなす幻想的な世界。原画だからこそ伝わる情感がここにある。
ストーリーに没入できる展示構成の工夫
この展覧会は、原画を単に並べるだけではない。こうの史代の創作の意図を最大限に尊重し、連載作品は1話単位、短編は全ページを基本に展示される工夫が凝らされている。
これにより、ストーリーの流れが分断されることなく、まるで単行本を読んでいるかのように、漫画の世界に没頭できるだろう。ページをめくるごとに、こうの史代が当時どのような気持ちで、どのようなストーリー構成を考えていたのか、その「漫画家の気持ち」を肌で感じることができるかもしれない。

広がる海と空、そして少女。作品ごとに様々な表情を見せる世界観に引き込まれることだろう。
各単行本のカバーを飾ったカラー原画も必見だ。印刷物では味わえない、鮮やかな発色と細部の描写に、きっと心を奪われるはずだ。
熊本での特別な体験!多様な関連イベントにも注目
熊本県は近年「マンガ県くまもと」を掲げ、漫画文化に力を入れている。その熊本での開催だからこそ、この展覧会は膨大な原画展示に加えて、多彩なイベントが用意されている。
こうの史代本人や監修者によるトークイベント、目の前で絵が生まれるライブペインティング、さらには参加者が実際に漫画を描く「1日漫画寺子屋」や、展覧会場の壁に自由にラクガキができるワークショップまで、クリエイティブな才能を刺激されるような企画が多数ある。
| イベント名 | 日時 | 会場/集合場所 | 定員/対象年齢 | 参加費 | 概要 |
|---|---|---|---|---|---|
| オープニング記念 謹賀新年トーク | 2026年1月4日(日)13:00-14:00 | ホームギャラリー | 80名(当日先着順) | 観覧無料 | こうの史代、福永信によるトーク |
| ライブペインティング | 2026年1月5日(月)13:00-17:00頃 | 展覧会場内 | なし | 展覧会観覧料が必要 | こうの史代が会場内で絵を描きます |
| 1日漫画寺子屋 | 2026年2月14日(土)10:30-18:30予定 | キッズファクトリー | 先着15名(中学生以上) | 1,000円(材料代) | 熊本民謡「おてもやん」をテーマに漫画制作 |
| 壁にラクガキをしよう! | 2026年2月15日(日)10:30-12:00予定 | 展覧会場入口 | 先着20名(小学生以上) | 500円(原状復帰代)+観覧料 | こうの史代と一緒に会場の壁にラクガキ |
| お手紙が書けるよ! | 会期中全日 | 会場内 | どなたでも参加可能 | 展覧会観覧料が必要 | こうの史代にファンレターを書くコーナー |
| ギャラリーツアー | 1月31日(土)、2月22日(日)14:00-14:45 | 展覧会会場入口 | 申込不要 | 展覧会観覧料が必要 | 担当学芸員による解説ツアー |
さらに、こうの史代が選んだ映画を上映する「月曜ロードショー」や、彼女が選定した熊本市現代美術館の収蔵作品が展示される「G3-Vol.163 CAMK コレクション こうの史代セレクション」など、関連企画も盛りだくさんだ。これらのイベントや企画に参加すれば、こうの史代の作品世界をより深く、多角的に楽しむことができるだろう。
展覧会開催概要と観覧料
この大規模展覧会の詳細は以下の通りだ。
「漫画家生活30周年 こうの史代展 鳥がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり」
- 会期: 2026年1月4日(日)~3月8日(日)
- 会場: 熊本市現代美術館 ギャラリーⅠ・Ⅱ(熊本市中央区上通町2-3 びぷれす熊日会館3F)
- 開館時間: 10:00~20:00(入場は19:30まで)
- 休館日: 火曜日
- 観覧料:
- 一般:1,300円 (前売り/団体割引で1,100円)
- シニア(65歳以上):1,000円 (前売り/団体割引で800円)
- 学生:800円 (前売り/団体割引で600円)
- 中学生以下:無料
- 各種障害者手帳提示の方と付き添い1名:無料
- うぇるかむパスポート提示の方:無料
購入方法アドバイス:
前売り券は2025年12月28日(日)までの販売となるため、少しでもお得に観覧したい場合は早めに手に入れるのがおすすめだ。美術館の公式サイト(https://www.camk.jp/exhibition/kounofumiyo/)で詳細を確認し、チケット情報をチェックすると良いだろう。
熊本で体験する、こうの史代の世界
こうの史代の漫画は、見る人それぞれの心に、温かい光を灯してくれる力がある。その「愛しき創作の源流」をたどるこの展覧会は、これまで知らなかった彼女の魅力を教えてくれるだろう。
福永信が言うように、一人で見に行ったとしても、こうの史代の作品からは「友達のような目線」を感じ、決して寂しくはない。むしろ、作品を通して深い対話ができるような、そんな感覚を味わえるはずだ。
この冬、熊本で、こうの史代の30年の軌跡をたどり、心温まる感動を体験してみてはいかがだろうか。
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